暮らしと住まいについて考えています。
ゼロ化するリビング
リビングについて考えてみたい。
リビングという言葉は19世紀の終わりに出現する。ヨーロッパでは16世紀以降寝るところ以外の部屋名がたくさん生まれてきた。それは家が公的な場所として機能していたからだ。大事なお客様を食事に招待し政治の話などがなされてきたに違いない。サロンを始めとし、サロンに隣接するドローイングルームやスモーキングルーム、スタディールームなどさまざまな部屋が生まれていった。しかし産業革命以降、公的な空間は家から独立して事務所や官庁という空間が生まれることになる。家が家族のものへと、または親しい友人を招くものへと変わっていった。そして寝るところと食事をするところ以外をリビングルームと呼ぶことになった。19世紀の終わりにアメリカのある建築家が名付けた言葉だが、それを意識的に使うのはフランクロイドライトであった。彼の自宅では明確にリビングルームという言葉が使われ1910年以降には彼の設計するすべての住宅にその名前が使われるようになる。これは推測だが彼がヨーロッパにわたりリビングルームという言葉とともに近代住宅の概念が明確に確立されていったのではあるまいか。グロピウス率いるドイツのバウハウスの運動での住宅にもこの考え方は踏襲されている。そして世界中に浸透していく、現代の個室+リビングダイニングという概念が確立されることになる。そしてリビングルームには時代ごとに様々な幻想がついてまわるのである。時には客室として、またはホームパーティーの舞台として、活躍することにもなっていく、広いリビングルームは財力の象徴にもなったのである。しかしそれから90年近くたった現代においてリビングはその役割はずいぶん変わってきた。住宅は家族のためだけの器になっていったのではないだろうか。そして決して広くはない日本の住宅事情だ。だとするとそれはどんな機能があるのだろうか。寝ることと食べること以外の機能はあるのだろうか。

多くの人は、本を読んだり、音楽を聴いたり、友人を招いて歓談をしたりということも思うかもしれない。しかし実際にどれだけの人がそうした時間を過ごすのだろうか。実は、家に帰ってほっとする場所、それは何もしない場所なのかもしれないと考え始めている。

リビングは何もしない空間、だからこそ整理整頓されものも置かずにすっきりとした空間に身をおいてみたい。ほんの短い時間しか過ごせないリビング、家族の最後の幻想は、ゼロの空間に身を置くことだと定義づけてみてはどうだろうか。
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